「勉強が出来ないからやる気が出ない」の悪循環を断つ
~『QB臨床検査技師』を利用した教育の工夫~
九州医学技術専門学校 教務次席部長兼臨床検査科長 坂口 みどり先生
国家試験問題の演習に、まずは抵抗感なく「慣れる」ことが大切
―九州医学技術専門学校さまでは、『QB臨床検査技師』(以下『QB検査』)を学校指定の問題集としてご活用いただいています。坂口先生は、本書を利用しながら学生さんの学習習慣への積極的な介入を行っているということで、本日はその工夫についてお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
はい。よろしくお願いいたします。本学(3年制)では、2年生の前期に『QB検査』を購入させています。学生それぞれに購入時期・書籍を任せるよりも、学年で統一した問題集を設定したほうが学生の学習進捗の管理・把握がしやすいため、教員側から書籍を指定しています。講師の先生にも「指定問題集をベースに授業をしてください」とお願いしています。
―有難うございます。2年生の前期というのは、どういった背景での設定でしょうか。
本学では本格的な国家試験対策を、2年生の後期頃から開始しています。具体的には、本学作成のオリジナル過去問演習フォームを学生に送付し、採点・成績管理をする、という施策を9月頃から開始します。この演習をはじめる前に、まずは「国家試験の形式に慣れてもらう」必要があると考え、2年生の前期に問題集を配布としております。
―国試勉強に慣れるための準備運動・入門書の位置づけで『QB検査』をご利用なさっているということですね。
はい。実は以前は別の市販の問題集を使用していました。しかし、文字量の多さに圧倒される学生が多く、国試に慣れるための問題集配布のはずが、問題集を初めて開いた時点で既に「こんなにあるのか…」とやる気をそがれてしまうケースも多くありました。想像力が不足していたり、日本語の読解力が十分でなかったりする学生もおり、そういった生徒の学習サポートが難しいという問題がありました。
そして2021年に『QB検査』が登場しました。イラストや図表での解説が特徴的なこの問題集は、上記のような問題を解決するのにうってつけだと思いました。また、従来から本学の図書室には『病気がみえる』シリーズを設置し、学生が使用できる環境としておりましたので、学生への馴染みもよいかと思い、採用書籍の変更に踏み切りました*。
*『QB検査』には『病気がみえる』の図版を多数流用しています。
―演習方法に関してはなにか指示を出していますか。
朝、朝礼の時間があるのですが、その時間帯で毎日4分30秒設けて、最低3問は解こう、というルールにしています。4分30秒で3問というのは、2時間半で100問解く本番を意識しての設定です。解く箇所については、苦手なところ、得意なところ、当日の授業で扱われる部分、など、各学生に任せています。
また、各学生の『QB検査』の演習状況が可視化されるようにしています。教室のうしろの壁に、一人一行・一項目一列となるように作成した”『QB検査』進捗表”を貼っています。学生には、終わった項目から自分の行にシールを貼っていくように指示しています。スタンプラリーのようにシールを貼って可視化するという行為は、学生に達成感を与えやる気を促します。また、教員側でも個人の進捗を把握することが出来るのが利点です。
やる気を保つ工夫が、学年全体の成績を底上げするコツ
―有難うございます。やる気を削がずに国試への慣れを身に着けてもらう工夫が、学生さんの確実な学習習慣形成に繋がっているのかと思います。
本学のような専門学校には、「大学に行けなかった」というネガティブな感情を持ちながら学校に来ている学生もいます。将来的に同じ資格を取るのだから、今勉強をすることが大切なのだと生徒には伝えるようにしています。
また、勉強の習慣がない、どうやって勉強すればいいのかわからないといった学生も少なくありません。良い成績が取れればやる気につながりますが、そもそも勉強の仕方がわからないから、成績も伸びない。成果がでないから、さらにやる気が削がれてしまう。そういった悪循環となってしまう。このような子たちにも勉強をしてもらうためには、ただ授業を受けてもらい,宿題を出すだけでは駄目だと考え、問題集の使用や授業の形式で工夫を凝らすようにしています。
―工夫の方法を具体的に教えていただけますでしょうか。
専門学校ですので、1つの教室でみんなが一緒に学びます。この環境をうまく利用しています。
例えば、3年生では問題を自分で作成し、周囲の学生と比較検討を行う授業を行っています。厚生労働省が発表している出題基準を参考に各学生が作問をし、他の学生が作った問題とすり合わせをしてみる。もし別の人が同じ切り口で作問をしていたら、きっとそれは大事な出題ポイントなのだろう、といった形で主体的な理解を促します。そしてその後に『QB検査』の該当範囲を解いてみて、「やっぱり過去問でも問われているのだ」ということを確認するといった手法です。
また、勉強が得意な学生と苦手な学生でペアを組ませて一緒に勉強してもらう手法も取ったりしています。
「どうやって勉強すればいいのか」を具体的に指導する
―学生同士がお互いを高め合う形式のアクティブ・ラーニングですね。先生方が学生さん一人ひとりの学習に介入する場面もあるのでしょうか。
2022年からは3年次に教員―学生チュータ制度を開始しました。教員一人につき成績が良くない学生3~4名を担当し、どういった勉強をすればいいかを一緒に考えています。また、試験が終わった後「なんで自分はこういう解き方をしたのか」を相談する機会を設けたりもしています。
最近は、基礎学力の低下のあらわれなのか、勉強と作業の区別がついていない学生が多いような印象があります。問題集をひたすら「ノートに写すだけ」「音楽を聞きながら眺めるだけ」になっている学生もいて、果たしてそれは勉強になっているかな?と疑問を投げかけて、改善を促すよう心がけています。「繰り返し解こう」「教科書、問題集の大事なところにマーカーを引いて、書き込みをしよう」といった、勉強法の指導を行っています。
特に私は、ノートではなく問題集に直接書き込みをすることをおすすめしていて、誤文部分の横に、正文を書き込む癖をつけるように指導しています。教科書にもチェックをするよう促しますが、その際、先ずは黄色蛍光ペン、もう一度出てきたらピンク蛍光ペン、更に出てきたら緑色蛍光ペンなど薄い色から濃い色と重ねてチェックしてもらいます。そうすると毎年出題されているところ、数年に1回しか出題されないところが一目瞭然で判断できます。「教科書と問題集はきれいに使いたい。」という学生も居ますが、
勉強ができる子は、自分で学習を進めて解答・解説を作成することが出来て、介入せずとも成績を伸ばしていきます。こういった「出来る子」ではなく「出来ない子」をどうサポートしていくかが各学校の課題なのではないかと思います。
―大変勉強になります。『QB検査』は、イラスト・図解、丁寧な解説をご好評いただいております。こういった特徴から、勉強に不慣れな学生さんのサポートが出来れば幸いです。
勉強が苦手な学生は、どこに何が書いてあるのかを調べ、まとめる、というのが苦手です。『QB検査』では、必要な知識が既に読みやすくまとまった状態で記載されていますから、勉強が苦手な学生が「勉強のお手本」を見て学び、やる気をキープしながら勉強に慣れることができる問題集だと考えています。
『QBオンライン臨床検査技師』の付録も、登下校中の隙間時間の勉強ツールとして生徒から重宝されている印象です。
国試に合格するということは、「検査技師になりたい」という夢を持ってきた人たちが結果をつかむということです。検査技師って素敵な仕事なのだ、と学生さんには感じてもらいたいと常日頃考えています。
―はい。一人でも多くの学生さんが、ポジティブな感情をもって国試対策に臨み、合格をつかめるよう応援しております。貴重なお話、有難うございました。